フリーランスの美容師とは?求められる5つのスキル

最近、フリーランスとして働く美容師が増えていると言われており、その数は2017年時点でおよそ8万3,000人(出典:日経MJ11/6)。今後ますますその人口は増える事が予想されています。

では、なぜ今フリーランス美容師の注目度が上がっているのでしょうか。

そこには、サロン所属の美容師では出来ない、フリーランス美容師ならではの働き方とそれに伴う魅力がある為です。そこで、フリーランス美容師について知っておくべき事、求められる5つのスキルをまとめてみました。

そもそもフリーランス美容師とは?

一般的にフリーランス美容師とは、特定のサロンに所属せず雇用契約も結ばずに、また自身の店舗を持たずに(独立ではなく)個人事業主として働く美容師の事を指します。

一方、雇用契約を結んでいるわけではないものの、美容室から業務委託され特定のサロンで働いている美容師の事もフリーランスと呼ばれているのが現状です。

美容師は正規雇用の場合、平均年収は270万円台と他業種平均より3割も低く、主に金銭面の問題で長期間続けることが難しい職種の一つでもありました。これまでは自身で店舗を持ちオーナーとなる「独立」を目指す美容師が多かったものの、近年は業務委託型の美容室やレンタルサロン、シェアサロンを利用して自身の腕とコネクションで稼ぐフリーランスが増えており、その働き方が多様化しています。

では、契約の違い、働き方の違い、それによる収入差がどれほどか。フリーランス美容師のメリット、デメリットを調べてみました。

業務委託・面貸し・シェアサロン、それぞれの違いと収入差

フリーランスとして活動する美容師の場合、業務委託契約を結ぶ、面貸し・シェアサロンなどと呼ばれるミラーレンタルを活用する、といった働き方があります。ただ、これらの収入・契約形態等は、契約するサロンによって条件が幅広く設定されており、明確な定義はないのが現状です。

働く場所

業務委託の場合、見た目上では雇用契約と変わらず、特定のサロンで働き施術する事で売上の40~60%の歩合を得ます。

一方、面貸しやシェアサロンと呼ばれる形態の場合、顧客のニーズや自身の環境によって特定のサロンを毎回使うわけではなく、様々なサロンを間借りします。

収入条件の差

業務委託・面貸しともに求人広告サイトなどで多く見られるのは40~60%の歩合制です。しかし、この条件はややフリーランスに不利と認識され始めており、現在は歩合が70%以上となるケースも散見されます。

また、フリーランスの美容師がサロンを利用する際、時間単位で使用料(30分750円が一般的)を支払うケースもあり、それらの条件も歩合との兼ね合いですので、顧客へ提示する施術料金も含めて収支のバランスを見極める必要があります。

集客・備品の違い

業務委託の場合は、自身が特定の顧客を集客するだけではなく、サロンに来店したお客様全員が施術対象になります。また備品もサロンで用意された物を使えるケースがほとんどです。

一方、面貸しやシェアサロンと呼ばれる形態の場合、自身で顧客を集める必要があり、サロン側が集客支援を行ったり、サロンへ新規来店したお客様をフリーランスの美容師が受け持つ事は基本的にありません。

ただし、これらの条件は歩合との兼ね合いで決められているケースが多く、業務委託であれ面貸しであれ、契約形態は様々です。

中には一席のオーナーとなる契約も

こちらは面貸しではなくシェアサロンと呼ばれるケースですが、不動産のオーナーは別に存在するものの、サロン内の一席を自分専用とする形態です。

この場合、毎月の固定料金(数万円~15万円程度)を支払うのが一般的で、自身が使用しなければ席は常に空席となっているので、どのように顧客を呼び、稼働率を上げていくかといったマネジメント能力も必要とされます。

それぞれの収入差とは

一般的には安定してある程度の収入が見込めるのは業務委託で働くフリーランスでしょう。自身の顧客をサロンへ呼ぶこともできれば、サロンへ訪れた新規のお客様を施術して歩合を稼げる為、自身の集客力にまだ不安があるという方には向いているかもしれません。

事実、同一店舗で雇用契約から業務委託契約へ変えただけで毎月の収入が40万円になった、なんて話もあります。

一方、業務委託型のデメリットは場所の自由度が無いという点。商圏が限られますので、特定のサロンでのみ働いている以上、収入の上限は頭打ちになりやすいです。また、雇用契約と違い保険や税金の支払いは全て自己負担となりますので、見た目上の収入が上がっているように見えても実際の手取りはそれほどでもない、といったケースもあります。

一方、面貸しやシェアサロンを利用するフリーランスは自由度が高い為、集客力やフットワークに自信があるならば収入はやればやるだけ上がっていきます

勿論、業務委託で働くのは週の内1.2日のみ。後は面貸しを利用する、など幅広い選択肢がありますので、自身に合わせた働き方、収入条件、必要経費等を自身で管理していかなければどのような形態であっても収入アップは望めません。

では、フリーランスの美容師として働いていく上で求められるスキルとはなんでしょうか?

スキル1.「技術力」

フリーランスの美容師の場合、原則すべてのサロンワークを一人で行います。サロン勤務時と違い、アシスタントもつきませんので、始まりから終わりまで、全て一人で完遂できるのは勿論の事、顧客の様々なニーズに応えるカット力、接客力、観察力、提案力が求められます。

また、フリーランスのメリットでもありデメリットでもあるのが職場での「人間関係」が少ないという点。煩わしさが無い一方、技術的な事を教えてくれる先輩も居なければ技術を伝えて作業を補佐してくれる後輩もいませんので、独立時に必要最低限の技術力を備えておく事は勿論、最先端の流行やカットにアンテナを巡らせ、新しいスタイルを率先して獲得していく能力も必要となるでしょう。

スキル2.「集客力」

サロン勤務であれば広告宣伝費は経営者の負担であり、広告戦略にスタイリストが大きな責任を持つというケースはあまりありません。しかし、フリーランスの美容師は自身で顧客を集める必要がありますし、広告宣伝にかかる費用も当然すべて自己負担です。

現在フリーランスで働く美容師の多くは「Twitter」「Facebook」などのSNSを駆使してセルフブランディングを行っており、「自分」のブランド力を高めて顧客を囲い込んでいく必要があります。

無料のSNSを利用するのは勿論の事、その他の集客ツールにどう経費と労力をかけるか。経費の管理能力も含め、集客にかける知識の有無は非常に大切です。

フリーランスの美容師の大きなメリットはやればやるだけ自分のお給料となるところ。完全歩合制の個人事業主となるわけですから、自身と顧客にとって好条件なシェアサロンの場所を見つける事は勿論、新規の顧客も獲得していく為の営業力は収入に直結します。

フリーランスの大きなデメリットである収入の不安定さを無くすためにも、「集客力」は必須スキルです。

スキル3.「顧客管理能力」

「何日」の「何時」に「誰」の施術を「どこで」行うのか。これらを全て自分で管理してスケジューリングしていかなければなりません。また、様々な店舗で施術を行うフリーランスの場合、移動中やプライベートの時間に顧客からの連絡が入る事もよくあります。その為、顧客管理はいつどこでも使えるモバイルツールである事が必須と言えるでしょう。

代表的なツールは「LiME(ライム)」という無料スマホアプリ。現役の美容師が美容師の為に作ったアプリで、顧客のカルテ・予約管理の使い勝手は勿論、大事な「顧客の個人情報を守るセキュリティ」面でも優れています。

また、施術中などで電話が取れないケースも多いので、予約の受付や問い合わせ等の連絡手段は、LINE@のようなテキストベースのアプリを利用する方が多いです。

フリーランスの大きなメリットの一つに「自由」である事があげられますが、一方でオンとオフの切り替えが無くなるといったデメリットもあります。その為、施術以外の業務はなるべく機能化・効率化を図りたいところです。

「〇〇(サロン名)ではなく、あなたに切って欲しい」

そんな思いで予約をしてくれるお客様に対して、どこまで情熱と覚悟を持って接する事ができるか。顧客管理を徹底するのはフリーランスの大切な心得と言えるでしょうね。

スキル4.「自己管理能力」

ケガや病気をしないよう、健康な体を保つのは当然として、それ以外に必須の自己管理が「財務状況」の管理です。

財務なんて言うと会社のように聞こえるかもしれませんが、フリーランスの美容師とは自分自身が事業主であり一つの会社のようなもの。収入は勿論、支出の面にも目を配り、それらを自分で管理しなければなりません。また、フリーランスで働くという事は「確定申告」も必須となりますので、税金に関する基礎的な知識・必要な手続きは知っておかなければなりません

関連記事:フリーランス・個人事業主がチェックすべき5つの税金

また、これも顧客管理と同様、確定申告用の様々な無料ツールがありますが、本格的に営業活動を開始したフリーランスにとっては、確定申告用の無料アプリの機能は不十分なケースが多いのが実情です。これから始める方はまずは無料アプリからで構わないかと思いますが、より実用的な物をお探しの場合にオススメしたいのは、フリーランス協会の提供する「ベネフィットプラン」です。

ベネフィットプランとはフリーランス協会の一般会員に入会(年会費1万円)する事で受けられるサービスで、様々なクラウド型会計ソフトのfreee、弥生、MFクラウドなどの有料コースが一部無料になります。

また、煩雑な会計処理・確定申告の処理などについて、美容師だけではなくフリーランスで働く方全般に向けてのセミナーが頻繁に開催されていて、様々な面でスキル向上にもつながります。

関連記事:フリーランス協会とは?

ベネフィットプランの中には、福利厚生サービス「Welbox」の無料利用もついてきますので、フリーランス協会を知らなかったという方は是非「Welbox」の関連記事もお読みください。

スキル5.「リスクヘッジ」

最後はフリーランスの美容師が抱える「リスク」について少し説明します。

自分にお客が付かない、顧客管理を間違えてしまった、などのミスは問題外ですが、それとは別に大きく分けて二つのリスクがあります。

  • 損害賠償のリスク
  • 就業不能のリスク

どんなに自己管理を徹底していても不意の事故や病気で突然仕事が出来なくなれば、当然収入がゼロになります。また、面貸しサロンで借りた高額な機械が壊れてしまった(壊したと誤解されたり)、顧客とのトラブルで業務委託先のサロンに大きな損害を与えてしまった、期せずして法的な賠償責任のトラブルに巻き込まれてしまった場合、フリーランスというのはとにかく立場が弱いもの。

自身の身を自分で守るリスク管理はとても大切です。

顧客トラブルで多いのは

  • カットやカラーがイメージと違う
  • 「お任せ」と言われたので無難な髪形にしたが納得してもらえない
  • パーマや矯正が髪質に合わない事を説明しても納得してもらえない

といったケースですが、中には実際に裁判にまで発展してしまうケースもあります。

新宿・歌舞伎町のキャバクラに勤める女性(27)が、美容室で希望通りのヘアスタイルにしてもらえなかったため苦痛を受けたとして、東京都渋谷区の美容室に600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は、約24万円の支払いを命じました。 (平成18年8月24日 東京高等裁判所)

こういったケースで必要となるのは万一に備える「保険」ですが、そういった意味でも知って頂きたいのがフリーランス協会の提供する保険です。

賠償責任補償、所得補償制度といったどちらにも対応する保険が用意されており、フリーランスの金銭トラブルに対して備えてくれます。

関連記事:フリーランス協会の賠償責任補償、所得補償制度って何?

これらの保険は、美容師の他にも仕事を持つパラレルワーカーの方にとっても有益な保険ですので是非ご一読下さい。