個人事業主・フリーランス向け保険・共済とフリーランス協会 メリット・デメリットは?

フリーランス・個人事業主の方にとってフリーランス協会の保険は果たしてメリットがあるのか。既存の保険とどういった違いがあるのか。

こちらでは、個人事業主・フリーランスにオススメの保険とともにおさらいしていきます。

個人型確定拠出年金(iDeco)、国民年金基金、付加年金

厚生年金に加入できないフリーランス・個人事業主にとって、国民年金だけでは老後の収入が不安ですよね。そこで、積立型保険のように、年金の支払いが上乗せされるのが、個人型確定拠出年金(iDeco)・国民年金基金・付加年金です。

これらはすべて所得控除の対象となる為、しっかり利益をあげている個人事業主の方にとっては節税の面でもありがたいシステムです。

iDecoと国民年金基金は、両方の合計で月額68,000円まで積み立てていく事が出来ます。

また、付与年金は毎月+400円の上乗せで65歳以降、付加年金を収めた月数×200円が、国民年金の支払いに毎月支払われるシステムです。

この付与年金は、国民年金基金に加入すると自動的に付帯するので、フリーランス・個人事業主の方にとっては老後の不安の解消と節税面で大きなメリットがあります。

サトシ

これはすでに多くの方が知っていると思う。厚生年金の無いフリーランスにとっては有難いシステムだし是非とも検討してみて欲しい。加入のデメリットは年金システムへの不安くらいかな……それでも民間の保険会社よりは信頼できる。

小規模企業共済と経営セーフティ共済

一般企業のサラリーマンでいうところの退職金のようなものに相当する小規模共済と経営セーフティ共済を見ていきましょう。

小規模企業共済

こちらは、加入している間支払う共済金が、全額「小規模企業等掛金控除」として税控除の対象となります。

月額1,000円~70,000円の間で金額を設定する事ができ、加入から7年間の間に任意解約した場合はそれまで納めた金額の80%が解約手当金として支払われ、20年で100%。以降、支給割合が増加するといったものです。

正に個人事業主の退職金とも言える制度で、節税と貯蓄を兼ねられるメリットがあります。

一方、デメリットは掛け金を100%以上貰えるのは20年支払い続けてからという点です。今後、フリーランス一本で生きていくと決めているような方ならいいのですが、もしも途中でサラリーマンになったりした場合にはその時点で解約となりますので、節税分と解約金の差額がマイナスになる事も十分考えられます。

サトシ

退職金制度のような小規模企業共済は20-40代でフリーランスで生きていく決意のある人にオススメ。月額も自分で決められるので節税のためにも利用したい制度だ。

経営セーフティ共済

本来は小規模事業主が取引先の倒産などで資金繰りに困った際、スピーディな融資を受けられるようにする事が目的として作られたものです。ですが、経営セーフティ共済は積立として後々解約手当金が出る事、経費として計上できる事から、節税目的で加入するケースも多い共済です。

解約手当金は、加入後12ヶ月以内は0%。13ヶ月目から80%となり、40ヶ月の加入でそれまで納めた共済金の100%が戻ってきます。

月々の支払は自分で設定が可能で、5,000円から最高で200,000円までとなっています。

経営セーフティ共済のメリットはこれら解約金と節税ですが、元々の特徴である融資についても、無担保・無保証人でこれまで支払った掛け金の10倍まで(最高8,000万円まで)融資を受けられるのは、備えとしてはありがたいですね。

デメリットとしては、掛け金の100%を超える解約手当金が戻ってくる事はない点と加入中は経費計上できるものの、解約手当金を手にした時には利益計上される点です。

これを知らないと解約した年度の収支、及び翌年の税金に大きな影響を及ぼしますので、解約するタイミングには注意が必要です。

サトシ

経営セーフティ共済は小規模企業共済に比べて解約手当が満期になるまでの期間が短いので世代を問わず使える共済だね。ただ、控除ではなく経費、解約金は利益扱いになると言う点で税金面では注意が必要だ。

文芸美術国民健康保険組合

文芸美術国民健康保険組合は、主にデザイナーやイラストレーター が加入できる国民健康保険の代わりとなる健康保険組合です。

フリーランス・個人事業主の悩みの種と言えば収入に応じて高くなる国民健康保険料ですが、フリーランスは仕事の量、収入にバラつきがある事も多く、前年度の収入で計算される国民健康保険料は家計を圧迫する場合がありました。

文芸美術国民健康保険組合は、この保険料が一定になるのが大きなメリットです。

文芸美術国民健康保険組合の保険料

組合員 月額 16,900円 年額 202,800円

組合員の家族 月額8,700円 年額104,400円(一人当たり)

となり、前年度の年収が200万円もあれば優にこれを超えてしまいますので、本業としてフリーランスをやっている方なら是非とも入りたい組合です。

一方、文芸美術国民健康保険組合には、それに加入している職種別の組合・団体があり、その組合員でないとこの保険に加入する事はできません。まず、自身の職種に該当する組合への加入、その後文芸美術国民健康保険組合への加入といった流れになりますが、審査も非常に厳しい事で知られています。

また、入会金・年会費が別途必要となりますので、こちらは誰もが加入できる保険ではないのが残念なところです。

サトシ

フリーランスなら誰もが頭の痛い悩みが健康保険。それを緩和してくれる文芸美術国民健康保険組合だけど、なんでこんなに加入ハードルが高いのか……。ライターであるボクは残念ながら加入できません。

フリーランス協会の賠償責任補償

フリーランス協会へ加入し、年間1万円の年会費で自動的についてくるのが賠償責任補償です。

これは、個人事業主・フリーランスの方が仕事中の行動・納品物によってクライアントや第三者に被害を与えてしまった場合に、その損害を補償する制度で、取引先のクライアントも守られる画期的な補償制度となっています。

この種の保険において、年会費1万円は破格の金額と言えますね。

また、年会費の1万円は経費として計上が可能なので、金額は小さいものの節税にも役に立ちます。

賠償金額は1000万円~1億円(損害賠償金・争訴費用)。個人では背負いきれないような損害賠償が発生しても、これに入っていれば安心ですね。

デメリットと言うほどのものではありませんが、こちらは積み立てる性質のものではありませんので、何事も無ければお金が戻ってくる事はありません。

サトシ

仕事上発生しうる賠償責任に備える保険だね。ライター・カメラマンなら著作権、プログラマーなどのIT技術者なら情報漏洩など、万一クライアントも巻き込んでトラブルになった場合に損害賠償金を賄ってくれる。
フリーランス協会の保険内容を徹底調査!所得補償とベネフィットプランとは

フリーランス協会提携の所得補償制度(損保ジャパン日本興亜提供の保険)

こちらは、万一病気やケガで仕事が出来なくなってしまった際に、前年度の所得に応じて、就業不能期間中の所得を保険金で補償してくれる制度です。

所得補償金額と保険料の例

30歳 年収600万円 webデザイナー

所得補償:420,000円/月 毎月の保険料:4666円

35歳 年収450万円 ライター

所得補償:280,000円/月 毎月の保険料:4,477円

40歳 年収800万円 営業職

所得補償:560,000円/月 毎月の保険料:7,310円

※上記の保険料と保証は加入口数により保険料・保険金が変わります。

月収換算で言えば約80%程度の保険金が下りる為、万一仕事が出来なくなっても、その間の所得が無くならないという安心感は大きいのではないでしょうか。

尚、仕事が出来ない状態かどうかは医師の判断となり、診断書を提出する必要があります。

一方、所得補償制度のデメリットは節税に繋がりにくい点です。所得補償制度は医療費控除の対象となっているのですが、医療費控除はこの保険の場合

納めた保険料-下りた保険金-10万円=税控除対象額

となっており、保険料が年間で10万円を超えるのは年収が1,000万円を超えるような方が対象です。所得補償制度単体では、実質節税には使えないというのはデメリットと言えるでしょう。

ただ、例えば親の介護等で毎月のように出費がある場合、こちらも医療費控除の対象となり、所得補償制度と合算する事が出来ますので、税控除の対象となるケースは十分にあります。

「医療費控除の対象」という事はしっかり覚えておき、それぞれの状況に応じて確定申告に利用しましょう。

サトシ

一時的に働けなくなった場合にお給料が出ないのがフリーランス。そのリスクに備え、家族や恋人を安心させるという意味でも所得補償制度は検討の余地があると思う。

フリーランス協会提携の傷害総合保険(損保ジャパン日本興亜提供の保険)

フリーランス協会入会を通して加入する事ができる損保ジャパンの保険には、傷害総合保険も付帯します(こちらはオプションで所得補償制度のみの加入も可能)。

こちらは一般的な傷害保険と同様の内容となっており、個人事業主やフリーライター本人がケガ・病気をして通院費・治療費が必要となった際、保険金が下りる制度です。すでに他の保険会社が提供している傷害総合保険に入っていたとしても、両方に保険金を請求する事が可能ですので、重複して入っていても無駄にはなりません。

こちらは月額1口1,080円から加入が可能となっています。

尚、傷害保険についてはフリーランス協会の保険に限らず、どの保険でも税控除の対象にはなりません。経費計上も出来ないので確定申告の際にはご注意下さい。

個人事業主・フリーランスにおすすめの保険についてのまとめ

個人事業主・フリーランスは、組織に縛られず自分の腕一本で稼げることが魅力ですが、その分安定や補償といった面でこれまで不安がつきまとっていました。

ですが、現在は上記のような各種保険・年金制度があり、生活不安・将来不安はかなり解消されてきていると言えるのではないでしょうか。

一方、自由なだけにこういったお得な制度・知識は誰も教えてくれません。当然ながら自分で情報を集め、自分で加入の手続きをしなければなりません。

文芸美術国民健康保険組合のように、加入のハードルが高いところがまだあるのは残念ですが、フリーランス協会は誰でも加入が可能です。

所得補償制度は必要ない方もいるとは思いますが、賠償責任補償は取引先の企業・クライアントも包括的に守ってくれる新しい仕組みとして大変注目されています。

安心を得るために保険料を払いすぎて収支バランスを圧迫するとなっては本末転倒。そういった意味でもフリーランス協会の年会費1万円は非常に魅力的と言えるのではないでしょうか。

年金積立や退職金のような共済も含め、自身の収支バランスを見極め、適正な保険を選べるようにしたいところですね。

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